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依々恋々 -Another story-

第36章 好きで、好きで



T.O.G前に、1台のセダンが停まった。

助手席に座っていた部下がさっと降り、後部座席のドアを開ける。

同行の秘書のアメリに続いて降りると、んー、と背を反らす。

「お疲れ様でした」
「ん、お疲れさん」
荷物を運ぶ社員を横目に、さて、と腕時計を確認する。

「あ、あのっ」
かかった声に、部下数名が周りを囲んだ。

「何かご要件ですか?」
アメリが前に出る。
スーツの男二人とアメリに止められたセーラーの制服に身を包んだ彼女たちは、少し、う、と詰まった。
そのうちの一人が、意を決したように前に出ると、あなたにっ、と封筒を差し出してきた。

失礼します、とアメリが代理で受け取ろうとした手紙が下げられる。

「お兄さんに受け取ってほしいですっ」
ずい、と差し出された手紙は、自分の目の前。

「俺か?」
インターン希望か?と受け取ろうとしたシャンクスの手を部下の一人が止める。
「代理で受け取ります。今回は、代表の対応を尊重しますが、以降はきちんとアポイントメントを取るように」
さっと手紙を取り上げた部下に、行きましょう、と社屋に誘導される。
え、あの、と数歩前に出た二人を別の部下が止める。

「今日は、お引き取りください」
「お約束のない方は、まずは調整係に連絡を」

隠すように立ちはだかる部下の間から、少しだけ、と聞こえる声。
こちらに、と誘導するアメリに続いて社屋に入る。
エレベータを待っていると、隣の方の部下がちら、っと振り返る。

「勇気あるっすねぇ」
「若気の至りだろう」
「どうします?これ」
ぴ、と指先で立てられた手紙。
「インターンの申込みではなさそうだな」
抜き取った可愛らしい封緘シールが貼られた封筒を、ジャケットの内ポケットにしまう。
「返事、書くんすか?」
別の部下からの問いに、書くわけ無いだろう、と笑う。

「他人には見られたくないだろう。責任持って処分する」
「処分、かぁ」
つきました、というアメリの言葉。

「他のやつに言うなよ」
「うぃーっす」

軽い返事の部下は、戻りましたー!と何事もなかったように執務室へと戻った。
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