第42章 Valentine
自宅で断りきれなかった『贈り物』を開封したシャンクスは、フッ、と笑みをこぼした。
隣で一緒に中身を確認したジウも、ふわりと微笑む。
「ママと作ったのかしら」
「だろうな」
袋の中には、小さなハート型のカラフルなアルミカップに可愛らしいトッピングがされたチョコレート。
「子どもの手作りバレンタインの定番ね」
私も昔作ったなぁ、と懐かしそうにする。
「...誰に?」
不機嫌そうに聞くシャンクスに、ローよ、と笑う。
「ラミ...ローの妹ちゃんとね。
渡したのは、父とローとローのお父さん。
好きな人に渡す、っていうのは、子供の頃は無かったなぁ」
「ある程度の年になってからはあるのか?」
気に食わなそうに聞くシャンクスに、あったよ、と言う。
「スモーカーさんには毎年渡してたよ。
買ったものの時もあったし、手作りの時もあった」
「...ほーう」
何かと葛藤している様子のシャンクスにクスリ、と笑い、キッチンに立つ。
「買った方がよかった?」
はい、と出されたのは綺麗に焼けているマドレーヌ。
「チョコレートは、たくさんもらうかな、と思って。
でもシャンはチョコ好きだから、一緒に食べらるようなのを、と言うことで」
プレーンと黒のものが2つが並んでいる。
「いろいろ調べてみて、マドレーヌがいいかなって」
「意味があるのか?」
「マドレーヌは、二枚貝の形でしょう?
ピタリと合う形が、夫婦円満とか仲良くなりたい気持ちとかに通じて縁起が良いんだって」
「なるほど」
黒の方を手に取ってかじりつく。
しっとりとした生地に染みたコーヒーの風味が美味しい。
「チョコレートと一緒に食べても、おいしいと思うよ」
チョコレートはもらってくるだろう、と見越して用意されたお菓子。
意味合いも含め、配慮されて用意されたお菓子に、愛おしさが募る。
コーヒー淹れる?とソファが立ち上がり掛けたジウの手を引いた。
「お返ししないとな」
「マシュマロやチョコレートはだめよ?
あと、グミとかもね」
ジウに向けた言葉だったが、彼女は幼い恋心へのお返しだと思ったようで、お返しのお菓子に返事の意味があるんだから、と言う。
「嫌いとか、もらった気持ちを返します、って意味になっちゃうからね」
菓子に意味が、と小さなチョコレートを舌の上で溶かした。
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