第2章 【呪術】思い出は薄氷の上に
食事を終え、美々子達を寝かせた後、奈緒は夏油と2人きりになり、意を決して口を開いた。
「私、夏油さんが分からなかったんです。菜々子ちゃんと美々子ちゃんに優しく接する貴方も非術師のことを猿という貴方も嘘をついていなかったから……」
奈緒からすれば相反しているような考えをどちらも真意として語った彼に混乱し、戸惑い、受け入れられずに気づけば飛び出していた。
その言葉を聞いた夏油は静かに息を吐き、ゆっくりと答える。
「……どちらも私の本音だからね」
「でも、もっとちゃんと知らなくちゃいけなかったって反省したんです。何も知らないまま私の価値観だけでここを飛び出して、皆に心配をかけてしまいましたし……」
そして何より、この優しい人達に歩み寄りたい。
彼らとの記憶は本当にわずかだが、それでも大切なのだと胸を張って言える。
聞くのが怖くないのかと言われれば、本当は怖い。
だが聞かなければ歩み寄る道を考えることもできないのも事実。
どちらを取るかなんて迷うまでもなかった。
「菜々子ちゃん達もそうでしたけど、どうしてそんなふうに考えるようになったんですか?……何かきっかけがあったんですか?」
「少し長くなるけれど、いいかい?」
そう前置きした夏油は語り始める。