第2章 【呪術】思い出は薄氷の上に
だけど、かつての仲間よりも大切になったこの家族達。
その家族の中心で笑っている彼女は。
私達が育てたれっきとした術師だ。
美々子、菜々子に挟まれて食事をする奈緒の姿。
少し引いて見ると、奈緒を囲む自分の大切な家族達。
どうやら彼女はもう自分の居場所を決めた様だ。
自分の家族が食卓を囲む光景を見て。
夏油は静かに微笑んだ。
なら…もう…。
自分のこの気持ちは奈緒に伝えるのは止めよう。
せめて、自分の言葉が呪いにならない様に。
『君に居て欲しいと』
そんな言葉が君の笑顔を曇らせない様に。
『夏油先輩!』
そう呼びかける君の笑顔が2度と曇らない様に。
『夏油さん』
そう呼びかける君の声が届かなくなっても。
私は君の意思を尊重するだろう。
家族が笑顔で過ごせるこの時間を大切にしてくれた。
君の意思は、絶対に曇らせる事はしないと誓おう。
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