第2章 【呪術】思い出は薄氷の上に
「…夏油さん…夏油さんも心配してくれたんですか?」
「……………」
「すいませんでした。行き先も告げずに外出してしまって…」
「…久織さん…前にも言ったはずだ。ここは君の居場所だ…好きなだけ居たらいいと…謝る必要はないよ」
夏油は奈緒の言葉に立ち止まって考える。
非術師の話をして少しすると奈緒がこの場所から出ていくのを見かけた。
もう彼女は2度と戻らない…そう思っていた
悟や硝子…彼女を知る者に会えば、すぐ保護されるだろうと…
ここに戻ってきたのはどういう理由なのか…
自身の考えに共感したということなのか…
夏油は奈緒に向き直ると、ここから出て行った時の様子が明らかに違うことに気づく。オドオドしたような、絶望した暗い表情ではなく、しっかりと目を据える様子が窺える。