第2章 【呪術】思い出は薄氷の上に
奈緒がここに住むようになってから、美々子も菜々子も奈緒を実の姉のように慕い仲が深まっていった。
奈緒の部屋で勉強を教えてもらったり、カードゲームをしたり、時には外に出て遊んだりしていた。
「あ…夏油さん…お久しぶりです。あれからなかなかお会いできなかったので…お元気でしたか?」
「…久織さん、少し…忙しくてね…元気そうでよかった。ここでの生活は慣れたかい?」
奈緒はいつものように2人と遊んでいると、忙しそうにしている夏油を見かけて駆け寄る。
怪我が治ってから、夏油が部屋を訪れる頻度が減り、いかに時間を作って会いに来てくれたのがわかり…少しでも夏油の役に立ちたいと考えていた。
「はい、相変わらず…記憶は戻りませんが…毎日楽しくやっています」
「そうか……それは何よりだ…記憶のことは焦ることはない。時が来れば思い出すさ…」
「あ…夏油さんっ!」
夏油は奈緒がここで馴染めている様子に安堵した表情を浮かべつつその場を去ろうとすると奈緒は夏油を引き止める。