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合同リレー作品集【鬼滅・呪術・ヒロアカ・WB】

第2章 【呪術】思い出は薄氷の上に



だけど、夏油に見つけて貰った。

大丈夫だと、自分は正常だと教えて貰った。
そして連れて来て貰ったこの場所には、自分の様な人間が『当たり前に』居た。



そう…、奈緒は夏油が見つけてスカウトで高専に入った生徒だった。
だから余計に奈緒の事を夏油は気にかけていた。



自分が導いた道が、彼女にとって苦痛ではないか…。
そんな心配をしていたけど、彼女はいつもその場所で笑顔で過ごしていた。



毎回夏油に、自分の居場所をやっと見つけたと。
その笑顔はいつも輝いていた。











「私は呪霊?に食べられて死ぬ所を夏油さんに助けて貰いました…」



奈緒の声で、夏油は思い出から醒めるように奈緒の顔を見た。
昔と同じ顔で、何度も自分に感謝の言葉を言う奈緒に、夏油は目を細める。



「私は、この場所以外に何も分かりません…。でも、夏油さんと、美々子ちゃんや菜々子ちゃんと一緒に過ごしている今の時間は、とても好きです。………ここに……居させて貰えないですか?……」



奈緒の切実な訴えに、夏油の顔が少しだけ歪んだ。



それでも……私は君の『居場所』が何処だか知っている。
私が君を見つけてこの世界に連れて来たのだから。



「…夏油様……」


今度は菜々子が不安そうに夏油の袈裟を掴んだ。
その背後には美々子も同じ表情で、夏油の答えを待っている。
そして、全く同じ顔で自分を見る奈緒に、もう一度目を向けた。



「…………久織さんが好きなだけここに居ればいいよ」



『ここはもう君の居場所だから』


最後の言葉は声が出なかった。
居場所が出来たと喜んでいたあの頃の奈緒の笑顔が、夏油の頭に過ったからだ。


それでも奈緒は夏油の言葉に、あの時と同じ笑顔を向けた。


「やったね!!奈緒お姉ちゃん!!」

「うん」


美々子と菜々子が嬉しそうに奈緒に抱き付くと、奈緒も2人を抱き返した。
その3人の姿を見て、夏油は少し笑って…。そしてやはり目を伏せた。


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