第2章 【呪術】思い出は薄氷の上に
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「…うん…、もう足も良くなったね、呪いに受けた傷もちゃんと自分の呪力で治せてる」
夏油は奈緒の足首を両手で触れながら確認する。
ベットに座って、自分の足に触れている夏油を見下ろす奈緒の顔は、相変わらず真っ赤だった。
「夏油様〜、奈緒お姉ちゃん治ったの?!」
「…そうだね…、もう治療は必要無いかな…」
嬉しそうな顔の後に、寂しい表情をした美々子と菜々子に、夏油は目を細めながら笑顔で言った。
「「……………」」
2人が押し黙ってしまって、夏油と奈緒はお互いの顔を見合わせた。
そうだ…、治療が終わったのなら、私はここに居る理由が無くなるのだ。
奈緒の考えている事が分かっても、夏油は何も言わなかった。
そっと、奈緒から目を逸らすと美々子と菜々子の頭を撫でた。
夏油の手に顔を上げた2人の顔は、ハッキリと奈緒に出て行って欲しく無いと言っている。
夏油さんは記憶が無くても心配しないで良いと言ってくれた。
私には帰る場所がちゃんとあるから、送ってくれると…。
奈緒も顔を伏せて、自分の拳を強く握った。
だけど、自分には帰る場所の想像も付かない。
奈緒はまた顔を上げて、夏油を見つめた。
……また…この縋る様な目だ…。
奈緒の視線に気が付いて、今度は夏油が目を逸らした。
奈緒の居るべき場所を考えた時に、奈緒との高専時代の会話を思い出した。
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