第2章 【呪術】思い出は薄氷の上に
これにも首肯が返ってきたので、奈緒はもう一度問題をよく読んでみた。
小学生向けの問題で文章を読めば解けるものばかりだ。
一般知識は記憶喪失の影響を受けていないことにホッと安堵し、美々子にアドバイスする。
「もう一度文章をよく読んでみよう?正男の言葉とか動作に注目するのがいいと思うよ」
「うーん……あ、ここ……」
美々子はすぐに答えが書かれている箇所を見つけ、解答を記入していく。
「正解!美々子ちゃんは理解が早いね」
パチパチと拍手するとまたも照れて肩をすくめてしまう。
だが最初よりもだいぶ距離は縮まった気がした。
しばし静かな時間が流れるかと思った矢先、バンと勢いよく部屋のドアが開き、菜々子がお菓子の袋を手に戻ってくる。
「美々子、おやつにしよう!奈緒お姉ちゃんも!」
テーブルにお菓子を広げ始めた菜々子は宿題が下に隠れてしまうのもお構いなしだったが、美々子の書き込みを見て宿題の進み具合に驚いた。
「もうそんなにやったの!?」
「うん、奈緒お姉ちゃんがおしえてくれたの」
「ずるーい!わたしにもおしえて!」
「もちろん、いいよ」
こうして奈緒は2人の家庭教師をすることになり、菜々子と美々子もどんどん懐いていった。