第2章 【呪術】思い出は薄氷の上に
あれから―……
夏油さんは毎日部屋に訪れてくれるようになった。
早朝来ることもあれば、夕方に夕食を持ってきてくれて私が眠りにつくまで側にいてくれる。
あの時…引き止めてからだろうか…
夏油さんは忙しいはずなのに…必ず毎日来てくれる…
「夏油さん…あの…」
「なんだ?」
「さ…流石に…その…お手洗いまでは1人で…」
「君を1人で行かせると、またフラフラ出て行くかもしれないからね。それに、足はまだ完治していないだろう?」
ある日の午後
いつものように夏油さんが部屋に訪れ、今日は本を何冊か持ってきてくれた。
退屈していると思われたのか、暇つぶしになる差し入れをたまに持って来てくれる。
そんな中、いつものようにお手洗いに行こうとすると、夏油さんに引き止められあの時のように両手で抱き上げられる。
再びトイレから出てくると、抱き上げられて自分のベッドまで運ばれた。