第1章 【鬼滅】霞屋敷のふろふき大根には柚子の皮が乗っている
受け取った産屋敷からの手紙を胸に抱き、奈緒は急いで産屋敷家へ向かった。
そして知らされた自分の任務。
グッと込み上げるモノを堪えて、奈緒はただ頭を下げた。
その時の、産屋敷の表情と優しい言葉は今でも忘れない。
奈緒はすぐに、空き家となっている霞屋敷に向かった。
産屋敷が複数所持している屋敷の1つだ。
ここで新しい柱となる『時透無一郎』様を迎える。
奈緒は隠特有の覆面を外し、隊服では無いけど、自分の黒い制服の一張羅に白いエプロンを掛ける。
この屋敷で柱様を迎えて、お世話する事が自分の使命。
そして産屋敷から課された『お願い』だ。
『無一郎は家族を鬼に殺されて、それは深い傷を負った。その傷は諸刃の剣になって、無一郎の強さを支えてなお、無一郎の孤独は深く根深い……。奈緒…私は君だからこそ……』
無一郎の支えになれると信じている。
産屋敷はそう奈緒に『託した』。
村の生き残りを助けてくれたお館様。
そして、鬼滅隊討伐隊になれなくても、その存在の意義と役割を与えて下さった。
ああ、私はまだ『この場所』で出来ることはある。
奈緒は自分に与えられた場所を。
『霞屋敷』を見上げて誓った。
この場所が私の戦う場所であり、お仕えする霞柱様の安息の場所でなければならない。
霞柱様は何がお好きなのだろうか。
何を見て心を休めるのだろうか。
そんな思いで新しく主人を迎える屋敷を手入れしていく。
自分が仕える主人を心待ちにしながら、奈緒黙々と屋敷の手入れをしていった。