第1章 【鬼滅】霞屋敷のふろふき大根には柚子の皮が乗っている
午後には継子が数名【霞屋敷】に押し寄せてきた。
せいぜい【辛】の位の地位の者たちだろう。
無一郎は、そんな継子達を有無を言わさずに一掃する。
本当に一掃と言う言葉が合っているのだ。
誰もが無一郎の太刀筋を見極めることすら出来ずに、気付けば無一郎の周りには継子達が転々と床に転がっている。
弱い者への慈悲の心なんて一切見えない無一郎に、奈緒の胸がぎゅっと締め付けられる。
アレは育てているのでは無い。
継子達の剣先でさえ、無一郎の訓練の延長に過ぎない。
勿論、そんな無一郎に付いてくる継子は居なかった。
「まだ初日です…、もう少し頑張ってみては…」
奈緒の言葉も虚しく、誰も霞屋敷を去る事を躊躇する者は居ない。
そして無一郎もまた、その様な継子を引き留める事もしない。
『弱い者は要らない』
そんな無一郎の無言の言葉が出て頭の中で響くようだった。
そんな中でも、無一郎は怪我をして奈緒の前に現れる事がある。
決して鬼が出ない様な日中に。
彼は体の傷を増やして奈緒の前に現れる。
「無一郎様!傷の手当を!」
奈緒がそう言って無一郎の腕を掴む。
しかし、無一郎はいつもと同じ、無表情で奈緒を見る。
それがたいした事でも無いと言う様に。
「…要らない…、騒ぐな…」
奈緒の気遣いが無用とでも言う様に、無一郎は淡々と言葉を放った。
ギリッと奈緒は奥歯を噛み締めた。
「あなたの体は!あなただけのモノでは無いです!」