第4章 6つのお題から自由に選択
「詭弁を……っ」
――水の呼吸 参ノ型 流々舞い
七瀬は連続して刀を振るったが、鉄扇もまた舞いの如く刀の軌道を巧みに逸らし続ける。
鉄と氷が激しくぶつかり合い、耳を聾(ろう)する音が闇を揺らした。
「ねぇ、人を斬ったことはあるかい?」
「私は鬼だけを狩る。鬼殺隊として、悪鬼の被害に遭う人を一人でも減らさなければならないから」
「そうだろうね。君の太刀筋を見ていればわかる。真っすぐで……退屈だ」
――血鬼術 冬ざれ氷柱
童磨は鋭い氷柱を多数作り出し、無慈悲にも七瀬へ向けて放った。
彼女は勘で氷柱の落下数が一番少ないと予想される場を瞬時に選択して滑り込む。
――水の呼吸 肆ノ型 打ち潮・乱
地面から突き出た小さな岩から跳躍し、自身の上方含め一帯の氷塊に斬撃を浴びせてから薙ぎ払う。
寸でのところでそれらを破壊したが、血鬼術によって“毒”を含む砕氷を僅かに吸ってしまう。
再び、ピシッと肺の奥にまで轟くような激痛に七瀬は眉を顰めた。
「すごい、すごい!俺の氷柱かわしたんだね!崇高な信念が君の強さに繋がってるのかな」
「……っ、黙れ……私の信念がそんなに可笑しいか……!」
「えぇっ、俺は感動したよ!」
扇と刀が激しく打ち合う中、童磨の声は変わらず愉しげだった。刀を振る度に七瀬の息が上がっていく。
呼吸を使う剣士にとって、この鬼は天敵だと気付いた時には、彼女の額には大粒の汗が滲んでいた。
刹那、日輪刀の刃が童磨の頬を浅く切り裂いた。
しかし、相手は意に介さずに笑い続ける。
「死力を尽くすのは美しいけれど、鬼狩りが守ろうとする人間たちは、いざという時に君たちを守ってくれると思うかい?」
「……何を、言っ、て……」
七瀬は唐突な問いに少し動揺しつつも、刀を構えて再度踏み込もうとした。
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