第4章 6つのお題から自由に選択
「……はい。私も久しぶりに参加したので、色々見たいですし、一緒に回りましょうか」
七瀬の返事に、童磨の口元がより深く笑みを刻んだ。
面を頭に斜めに付け、並んで祭りの喧騒の中を歩き始める。
提灯の光が人々の影を地面に落とし、それは時に重なり合い、時に離れて踊るように揺れていた。
「七瀬ちゃん、偉いよねぇ。学業にアルバイト、すごい頑張ってるよ。何か夢とかあるの?」
「日本の歴史や文化を研究して、後世に伝えていきたいんです。特に民間信仰や伝承について興味があって、大学でも専攻しています」
「この辺で歴史関係に強い大学……鬼滅山大学かな」
「童磨さん、よくご存知ですね」
「しかも、大学院生かぁ。研究もあるだろうし、一人暮らし大変だね」
「そうですね。でも、アルバイト先が斜め向かいだから、おばさんがおすそ分け持ってきてくれたりします」
「そっかー。近所に知り合いがいるのは心強い」
童磨と話していると、七瀬は心が軽くなるような錯覚を覚えた。
何を話しても否定することなく、自然と褒めてくれる。
彼と話すことが楽しいと感じつつ、七瀬が熱心に民間信仰や伝承に関する研究内容を語っていると、童磨はある話題で興味深そうに瞳を細めた。
彼が屋台の人から二本のラムネの瓶を受け取ると、片方は七瀬へと差し出される。
「あまり文献に載ってないらしいんだけど、この町にも鬼に関して古い伝説があるって聞いたことがあるよ」
「本当ですか?どんな伝説ですか?」
新しい話に出会えるかもしれないと興味を抱いた七瀬の目が輝く。
勿体ぶるように頭を左右に揺らした童磨は、少し考える素振りを見せてから口を開いた。
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