第3章 お題小説 Lemon
でも久織はもういない。
俺を外見で判断せずに認めてくれた久織。
俺のせいで顔を合わすことは無くなった。
初めての出会いからたまに顔を合わすことがあり、ほっとけばいいのにすぐに犬のように俺に駆け寄ってくる。
喧嘩の後だと、絆創膏を渡してきたり気安く髪を触ってきたりする。
最初は不愉快で突き放したりした。
でも、久織は変わらず出会った頃のまま態度を変えず接してくれる。
話して行くうちに同じ歳でタメだとわかった。
聞いてもいねえのに学校であった事を久織が話し、俺が黙って聞くというのが日課になりつつあった。
そんな時事件が起きた。
俺があの時、喧嘩した不良グループに久織が攫われた。
仲間の1人に案内されるまま不良達の根城拠点に着くと久織は縛られて気絶していた。
一緒にいるのを見て俺の女だと不良達は勘違いしていた。
沸々と怒りが湧いてくる。
喧嘩はいつも自分のために拳を振るってきた。
誰かのためにこんなに怒りが沸き立つのは初めてだ。
怒りで真っ白になり気がついた頃には不良全員倒れていた。
久織に駆け寄ろうとするとサイレン音が鳴り響き近隣の住民が通報したのか警察が駆けつけた。
そこからは簡単だ。
俺が久織を拉致した不良達のグループの1人だと見なされた。
何を言っても、説明しても信じてもらえず、解放はされたが久織への接近禁止令が下された。
それから久織には会っていない。
その後どうなったかもわからず…俺は高校入学が決まったと同時に風鈴へとやってきた。