第3章 お題小説 Lemon
「らさん…?…桜さんっ…!」
「……っ…」
「桜君が人前で寝るなんて初めて見たよ。」
耳元で俺を呼ぶ声が聞こえる。
ゆっくり目を開けると風鈴高校の教室で俺は居眠りをしていたらしい。
楡井の声が頭に響き、頭が覚醒してくると蘇枋がいつものようにニコニコ笑顔を浮かべている。
夢…か…
自分の中で久織の事は割り切った事だと思っていた。あんな風に俺自身を見てくれる奴は久織しかいない。
風鈴に来るまでは…そう思っていた。
こんな風にこいつらの事、仲間と認識できるまでになったのは久織のおかげだ。この町の人は久織と同様容姿で俺を判断することはしなかった。久織が最初に人との触れ合いを俺に教えてくれた。
今ではこのクラスの級長として信頼…されている…と思う。
久織と2度と顔を合わすことはなくても、元気で過ごしていたらそれでいい。
夢の名残に浸っているとボーと寝ぼけていると思われたのか、耳元で楡井が大声で叫ぶ。
「桜さんっ!まだ寝ぼけてるっすか!」
「っ…うっせえっ!耳元で叫ぶなっ…!」
「っ…反応薄かったんで…まだ寝ぼけてるかと…」
「ちょっと…考え事してただけだ。」
席から立ち上がると窓から風鈴の街並みを眺める。
久織を守りきれなかった分、今度はこの町…仲間を守れるほど強くなりたい。
この想いを胸に。