第1章 【鬼滅】霞屋敷のふろふき大根には柚子の皮が乗っている
それよりもハッとしたのは、無一郎の肌や服に付いている血だった。
怪我をしたのだろうか…。
「……ご無事で霞柱様、あのっ」
奈緒は付着している血痕に付いて尋ねたいのに、無一郎は奈緒が見えないかの様に無言でその横を通り過ぎる。
グッと鈍く痛む胸を抑えて、奈緒はそれでも無一郎を追いかけた。
「霞柱様!お怪我をされていますか?!」
いつもより大きな奈緒の声が、2人だけの屋敷に響き渡った。
その奈緒の声に無一郎はピタッと足を止めると、振り返り奈緒を見た。
まだ身長もさほど変わらない無一郎の目線が、奈緒と合った。
「………………」
「?」
確かに無一郎は何かを言いたそうなのに、言葉が出ない様だ。
「…………怪我なんてしていない」
それだけ伝えると、無一郎はまた歩き出した。
あの間は何だったのだろう…。
そう考えても分からなかったので、とりあえず怪我をしていない事を確認出来たので、湯浴みに向かっている無一郎を呼び止める事はそれ以上しなかった。
無一郎が湯浴みをしている間に、軽い食事を作っておくことにした。
握り飯と、漬物、味噌汁。
すぐに食べれられて、早く休める様にお盆に乗せて部屋に置いておこう。
出来上がった軽食をお盆に乗せて振り返った時に、奈緒の体は跳ね上がった。
無一郎が扉の横に黙って立っていたからだ。
ガタッと揺れたお盆の上のお椀を溢さない様にするのが大変だった。