第3章 ※レイン・エイムズと奇妙な呪い
翌日の昼休み。
普段はぬいぐるみを作るなどして時間を潰している私だが、今日は珍しく中庭に出ていた。
「フォームが違う。腕を下げる時は真っ直ぐ」
マッシュくんに筋トレを教えてもらっていたからである。
彼は初心者にちょうどいいという重さのダンベルや器具を選んでくれて、フォームの解説までしてくれた。今はラットプルダウン? とかいう背中を鍛える筋トレを教えてもらっている。
「ありがとうさすがマッシュくん。そっちはどのくらいの重さなの?」
「ああこれ。持ってみる?」
「うん。……って重ぉッ、このダンベルびくともしないけど!?」
さすが筋力EX++++++++++++++++++++はレベルが違うなあ。
というかあれ? なんか+の数だいぶ増えてない?
「並んで何をやっているんだお前たちは」
呆れたような声に振り返ればそこには案の定ランスくんがいた。
近くのベンチにどっかり腰掛けると足を組む。
「マッシュはともかくお前が筋トレしてもしょうがないだろ。急に力にでも目覚めたか?」
「いや違くて……身体を動かしたら煩悩が消えるかと……」
「……ああ、なるほど」
ランスくんは納得した顔でため息をつく。
「ということはお前、まさかあれ以降放置してるのか」
「しょうがないでしょうよ……」
私もランスくんに釣られてため息をつく。
「恋人がいるのに?」
「それは……」
それを言われると口籠るしかない。
一瞬ランスくんに本当のことを言ってしまおうかと思ったが、2人で隠そうと決めたものを勝手に私の判断でバラすわけにもいかない。
ランスくんはそんな様子の私を真剣な表情でじっと見ている。
「……、なあ、ひとつ聞きたいんだが」
「何?」
「お前、もしかして結構見たくない他人のステータスまで見えているんじゃないか?」
私は目を見開く。
「たとえば”性欲"とか」
「っ」
思わず顔を背ける。目を覆ってしまいたくなるような記憶が一瞬頭をよぎりそうになった。
「……だいたい正解か。確かにそれなら男女の行為に嫌悪感を持つのも無理はないな」
ランスくんは組んでいた足を解いて立ち上がった。
「だが現実問題としてお前は危険な状態にある。それなりのトラウマがあるにせよ、お前は今レイン先輩を信頼して向き合うしかない」