第3章 きっかけはここから
私はいつも通り、ドズル社へ出勤しようとしていた。すると、その日はたまたま少し早めに出ていたというのもあって、ドズル社に荷物を運んでいるトラックとその配達員と遭遇したのだ。
いつもありがとうございます、と社交辞令で挨拶をし、配達員とすれ違おうとした時に、見たのである。
黒いモヤのようなものに覆われる荷物を。
しかし、配達員はそれに気付く様子なく、にこやかに私に挨拶を返してドズル社へ運んでいく。私は嫌な予感がした。
私は昔から、他の人とは違うものが視えていた。それは、人の周りに憑いている守護霊が視えること。
そして最近は、周りの人の悪い霊やオーラなども視えるようになっていて、その荷物を覆っている黒いモヤも、何かの警告なんだと私は直感的に思った。
「あ、あの……!」
配達員を呼び止めてはっと我に返る。声を掛けたところでどうするというのか。私は口をつぐんでしまったが、呼び止められた配達員はますます困惑な表情を浮かべていた。
「わ、私が運びます」
咄嗟に出てきた言葉だった。とにかくその黒いモヤをどうにかしないと、と荷物受け取った瞬間、予感は不快感に変わった。ドロリとした見えない何かが、私の体の芯に入り込んでくるような、そんな感覚。