第3章 きっかけはここから
「では、ここにサインを」
「あ、はい……」
終始ずっと内心が悟られないように必死だった私は、配達員の言葉にしどろもどろになりながらなんとか荷物を受け取った。他にも多くの荷物が出入口に置かれていたが、まずはこの黒いモヤの荷物を誰かに相談しないと、と思い立ったところで私の足が止まる。
誰に相談するのか。
私はこの会社員たちには、誰にも幽霊が視えることを話していない。もし誰かに、自分は幽霊が視える、この荷物は不穏な気配がするから開けない方がいい、なんて言ってすぐに信じてもらえるだろうか。
と私がウロウロと会社の廊下を歩き回っていると、丁度同じく出勤してきたドズルさんと出会ったのだ。
「おはようございます、早いですね」
とドズルさんに声を掛けられて。
「ドズルさん……!」
色々言いたいことがあったのに、安堵が強くてそれしか言えなかった。私が幽霊が視える人間であるということは、このドズル社のゲーム実況者たちは知っているのだ。
そして、察しのいいドズルさんがよっぽど私が青ざめた顔でもしていたのか、笑顔からさっと真剣な顔になって声を潜めた。
「……何かあった?」
私はドズルさんに、荷物が怪しい話をした。