第1章 *File.1*
「……!」
扉が閉まる音が耳に届いて、ふと我に返る。
あっ、安室透!!
そ、それに今っ!!
何してくれてんのー!!
あの人、あんな軽いオトコでしたっけっ?!
うーん。
とりあえーず今は、キレイサッパリ忘れましょうか!
うん。
私の為に忘れる。
それが一番いい。
で、どっちがホントの私なんですか?
気を失って、何故か走馬灯のように自分を思い出した。
私は私であって、私じゃない。
あのね、異世界転生の本は散々読み漁ったよ?
色んなヒロインパターンに、色んなタイプのイケメンなお相手がいて、それはそれはバラエティにとんで面白かったから!
でもね、ですよ!
だからって、なんで私が二次元の世界に来ちゃってんのよ!!
ポアロに梓さん、安室透。
お馴染みの刑事のみなさん、子供達、毛利小五郎一家に阿笠博士に灰原哀、怪盗キッド。
主人公の工藤新一=江戸川コナン。
みーんな此処にいるじゃん?
ってことは、ごく一般的な異世界転生として考えると、元の世界の私は死んだってことになる。
大きな病気も怪我もせずに健康だけが取り柄だったから、不慮の事故か何か?
そもそもが、私、既婚者で子供いたじゃん?
今の私は25歳でも、以前の私は立派なアラフィフ!なんですが??
旦那への愛は既に冷えきっていたからどうでもいいんだけど、子供達は元気なんですか?
この世界に居るんですか?
って、いるわけが無い、か。
だってココ、『名探偵コナン』の世界じゃん?
だからこそ、安室透の名前に反応した。
まるで彼と出逢うことが、私の記憶を取り戻すスイッチだったかのように。
うっわぁ!
一体どうしたらいいの?!
これからの私!!