第1章 桜舞う、出逢い
桜舞う季節…。
それは別れの季節と共に、出逢いの季節でもある。
真新しい青い襟に真っ白なセーラー服に袖を通して、紅いスカーフをキュッ、と胸の前でリボン結びにする。
お部屋にある全身鏡で最後に制服を整えると、まだ傷一つ付いていないピカピカのローファーを履いて鞄を持つ。
今日から私も高校一年生。
新しい学校に、可愛い制服。
どんな新生活が待ってるのかドキドキ、ワクワク…。
お友達、ちゃんと出来るかな…?
ちょびっと不安もあるけれど、やっぱりワクワクの方が大きくてそんな気持ちで揺られながら通学する電車を降りる。
【連合学園高等学校 入学式】
正門の前に大きく書かれた看板。
今日から私が通う高等学校。
ドキドキしながら正門へと一歩、足を踏み入れる。
すると、どこからか桜の花びらがふわふわと舞い降りてくる。
舞い降りてくる桜の花びらを追いかけるように後に続くと一本の大きな桜の木が満開の花を咲かせていた。
『はわぁ〜…綺麗ー…っ。』
一面、ピンク色に染まるその桜の木を見て思わず声を漏らす。
トテトテ…と桜の木に近付いて気付いた事が一つ。
桜の木の下で、木に背中を預けて片膝を立てて眠る一人の男の子。
色素の薄そうな白い髪に少し伸びた髪。
ブレザーの制服を少し着崩して、私のスカーフと同じ色の紅いネクタイを緩く首元で結んでいる。
眠っていてもわかるくらい整った横顔を思わず見つめてしまう…。
すると、ふわふわと桜の花びらが眠っている男の子の白い髪に落ちる…。
そっと近付いて側にしゃがみ込むと、そっと髪についた桜の花びらに手を伸ばしたところで男の子の目がぱち、と開く。
突然の事に身体が固まると同時に、初めて見る男の子の綺麗な紅い瞳に目を奪われる。
「…なに?」
『ぁ…ぇっと…花びらが…っ。』
「…ん、取って?」
『ぅ、ぅん…っ。』
身動きしない私をキョトン、とした顔で見つめた後、状況を把握した男の子が私の方へ少し頭を下げるとそっと白い髪に付いた桜の花びらを指先で取る…。
「…サンキュ。」
『…ぅん…っ。』
紅い瞳を柔らかく細めて見つめる彼。
これが私と弔くんとの出逢いだった。