第14章 それぞれの願い
何とか喰らいついていたけど、1セット目は烏野の強い攻めによって取られてしまった。
選手達はコートをチェンジし、監督からのアドバイスを聞いていた。聞き終わったみんなに、堅治くんが声をかける。
二「わかってると思うけど、たかが1セットだ。次取り返せばなんの問題もねぇ。」
皆「わかってる。次は絶対取り返す。それに今日は3セット取った方が勝ちだから、もし次取られてもまだ大丈夫だもんな」
二「そこはもう取らせねーくらい言えよ」
皆「それもそーだな!笑」
皆笑ってるけど、目は笑ってない。
茂「頑張れ、絶対次取り返せよ」
祈るようにして要くんが言った。
始まる2セット目
日向くんの速攻を止めるためにローテを少し変えたみたい。日向くんが前衛の間、うちの前衛には青根さんと堅治くんがいる。それに黄金川君も。この3人で止められないようなら、きっと誰も速攻を止められない。
監督の的確な指示と鉄壁の威力が発揮されて、何とか2セット目を取り返した。
この流れで残り2セットも取って欲しい。そんな簡単な事じゃないって分かってるのに、少し焦ってしまう自分がいる。
「観客席だからって気を抜いちゃダメ。選手達を不安にさせちゃダメ。」
春高予選の時に要くんに言われた言葉を呟いて、不安を鎮める。不安の代わりに、選手達に応援を。
その後の試合は、3セット目を取られて、4セット目を取り返した。
4セット目の途中に選手同士が軽い接触を起こした事を、5セット目で後悔する事になるなんて、この時は誰も思わなかった。