第9章 梅雨
夏油sideー
6月…
あれから夏梨は私に引っ付いて回るようになった。
少しでも傍を離れようものなら何処へ行くのか、いつ帰るのか心配そうな顔で尋ねる。
さすがに寝る時までは一緒にはいられないのでそういう時は硝子にくっついてるのをよく見かける
それにしても今日も雨か…こんな日はどうにも気分は上がらない。それは彼女も同じようで、最近はよくセンチになっている。
「ねぇ傑。前に言った言葉忘れないでね」
早朝2人きりの教室で彼女は窓の外を見ながら呟く。
その憂いを帯びた横顔に釘付けにされてしまう。
夏油「私は君を1人にはしないし、見捨てたりなんてしないさ。」
この話も軽く10回はしている。けど少しも面倒だなんて感情は湧かないし、むしろずぶずぶ自分の沼にハマっていく彼女が愛しくて仕方がない。
最近悟にはよく引かれた目で見られるし、硝子にはクズだなんだと時折お説教をくらうが、そんなのはどうでもいい
午後から彼女は1人で任務に行かなければならないらしい。
この前の件があってから、悟と硝子と話し合って変な虫が付くからと持たせていなかった携帯を持たせることにした。
もちろん高専関係者以外とは連絡先を交換しないと言う条件付きでだ。
彼女は良くそれを守ってくれている。律儀だ。
夏油「午後からの任務、何かあったらすぐ連絡するんだよ?私でも悟でも硝子でも。君のためなら飛んでいく」
「うん。ありがとう…」
そう言って彼女は微笑んだ。彼女の笑顔が見れなくなってしまうだなんて、この時の私達は考えもしていなかった。