第11章 実験。
30秒経過。この鼻を頼りにしていけば……と目を閉じて感覚を研ぎ澄ます。
が、何も感じない。やはり、さっきのはまぐれだったのだろうか。
なんか…靴が濡れている気がする。
目を開けると水があった。
水だったから匂いがなかったんだ。
と気づいたがもう遅かった。水はみるみる増えていく。
「“increase water”」
と声がしたと思うと、水が一気に増えた。とうとう頭まで浸かってしまった。
溺れる………っ!
だんだん意識が遠くなっていった。
すると今度は一気に水が無くなる。
「げほっ!げほっ!はあっ…はあっ…。」
水が鼻の中に入って痛い。服もびしょびょで重たい。
今までで一番過酷だったかもしれない。
「はい、お疲れ様〜。耳の能力もないみたいだね。」
それどころじゃないとへばっていると女性が一人近づいてきた。
「………大丈夫?」
透き通るような声だ。おそらく、水の能力者だろう。
心配してくれるだけ、ありがたい。
「その子は第1班、調査実行係の長谷部四月だ。」
「あっ…私の名前を呼ぶようなことをさせてしまってすみませんっ!」
と頭を下げている。厳しいのかな。
「あ、あの…それでは。」
また水みたいに消えてった。