第7章 練習試合!
ピーーーッ
試合開始の笛が鳴る。
サーブは狐爪さんだ。
威力はないものの、角ギリギリのいいコース。
何とか上げる旭先輩から繋がり、飛雄と翔陽の変人速攻が決まる。
「すげぇっ、速えっ、何!?」
「あんなとこから速攻・・・?」
「なんだありゃあ!?」
音駒のみんなと猫又監督のリアクションに思わずニヤリとしてしまう。
次は山本さんのスパイクが入るが、夕先輩が拾う。
先ほどの変人速攻を警戒して犬岡くんが翔陽に釣られ旭さんのスパイクが決まった。
烏野がリードしたまま11対9で猫又監督はタイムを取る。
「ありゃあ・・・ダメだ・・・。」
「え?」
「あれは、とんでもねぇバケモンだ」
「10番ですか」
「10番の方も変人じみてるが、セッターの方だ」
『!』
猫又監督の飛雄解説に驚く。
天才だとは思ってたけど、長年バレーを教えてきた監督ですらそこまで褒め称えるなんて、よっぽどセンスがあるんだ。
「しょうがねぇ、天才は。しょうがねぇ・・・が。天才が1人混じったところでそれだけじゃ勝てはしないのさ」
猫又監督が静かに狐爪さんを見る。
「・・・翔陽が攻撃の軸・・・なら、止めちゃえばいい・・・」
ポツリと話し出す狐爪さん。
音駒の作戦は、翔陽の動ける範囲を狭めた上で部で1番素早い犬岡さんがとにかく追いかけて止めると言うもの。
狐爪さん曰く何度も何度も繰り返していくうちに慣れて追いつけるはずだそうだ。
・・・なるほど。
黒尾さんが言ってた"脳"ってこう言うことだったのか。
まるでゲームでも攻略するように作成を組み立てる。
でも相手も人間だし、そんな簡単に行くのかな?
「手伝ってもらっておいて悪いけど、負ける気ないからな?」
『!』
黒尾さんがこっそりあたしに話しかけてくる。
『あたしはバレーの試合が好きって感じなんで、その・・・。確かに烏野が負けたら悔しいけど、簡単に勝っちゃったら練習の意味ないんで!問答無用でやっちゃってください!』
「!へぇ・・・。オッケー」
あたしの返答が予想外だったのか、少し驚きつつも意地悪そうな笑顔を浮かべる黒尾さん。
大丈夫。
だってインハイには、いろんなタイプの強敵がたくさんいる。
まずはここでどの程度通用するのか、対応されたときの解決方法を模索するための練習試合だ。