第2章 魔導書
当時5歳だった10年前のあの日、私は薬草で病気を治したあと、すぐにフィンラルを探そうとした。
人探しは難航を極める……かと思いきや、彼が有名貴族の長男であったことによりすぐに見つけ出すに至った。
とはいえ、今度は身分が違いすぎるという問題が生じる。子供であったこともあり身元がわかってもそう簡単に彼に会いに行くことはできなかった。
それから数年して、そのフィンラルが荒くれ者の集まりである黒の暴牛に所属することになったと風の噂で聞いた。
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「き、緊張する〜! どういう魔法が使えるようになるんだろ!」
あれから10年。相変わらず家族とはうまくやれていないがそれなりに元気に生きてこれた方だと思う。私ももう15歳になった。
そして今、私だけの魔導書を受け取ろうという時が来た。当然これを得たら私にはやりたいことがある。
「もっとすごい魔法が使えるようになりたい。いまだに手で持てるくらいの大きさのものしか作れないし……このままじゃ魔法騎士になれないもん」
そう、私の目標とは暴牛の一員になること。魔法騎士になることは彼ともう一度話すまたとないチャンスなのだ。
とはいえこのままでは入団試験を突破することは難しいだろう。クローバーのレプリカなんて作れたところで誰一人救えないし。
すると突然、本棚から抜け出た魔導書がこちらへ向かって一直線に飛んでくる。桃色の表紙がとても可愛らしい。
「あ、これが私の魔導書?」
これを得たら私の創造魔法ももっと強化されて、大きなものが作れるようになったりするはずだ。例えばなんかかっこいい剣とか!
そんな期待を胸に私は手を伸ばす。私の新しい人生がここから始まると信じて___。
「……っ!?」
しかし、その魔導書は私の想像していたものとは全く違うものであった。