第3章 臆病ものたち
入団と同時に挨拶を済ませ、一通り大騒ぎしたあと、アスタくんとマグナ先輩が戦っているのを他の先輩たちと一緒に眺めていた。
暴牛のアジトは不思議な形をした建物で、いかにもファンタジーの秘密基地といった風貌をしていてワクワクする。団員たちもみんな個性的でぶっちゃけカオスだがそれが楽しい。
「うちの男たちって騒がしいでしょ〜」
バネッサ先輩がお酒をあおりながら隣に来る。立ったままボトルで酒を飲むってとんでもない酒豪……。
「賑やかでいいですよね。私の以前の職場はみんな目が死んでいたので……」
「以前の職場?」
「遠い昔に働いてたことがあるんですよ」
あはは、と笑って誤魔化しながら自分もお酒を……いかん今の私は未成年でした。
この世界って何歳からお酒OKなんだろう。田舎に法とか無かったからよくわかんないよ。
「そ、それより男性陣と言えば、フィンラル先輩ってどんな人ですか?」
「フィンラル〜? もしかしてアンタ、あいつが気になるの?」
「気になるって言うか」
そうとも言うけど、そうやって一言で表せるような単純な感情とはまた少し違う気がする。
「……興味があるのは確かです。ただ彼のことを知りたくて。何が好きなのかとか、普段どんな人なのかとか、何したら笑ってくれる人なのかとか」
「へぇ……、これはびっくり」
バネッサ先輩はアルコールで潤んだ目をぱちぱちとさせる。
そして突然ぐい、と顔を近づけてきたかと思うと満足気に笑った。
「アンタ見る目あるわよ。フィンラルの奴、自信ないのか下手に出てばっかりで軽く見られがちだけどさ、仲間のこと人一倍大事に思ってるいい男なんだから」
「そうなんですか……」
それは私の中にある彼の像とぴたりと一致する情報だった。やっぱり彼は家庭のことで自信を無くしてしまっているのかもしれない。
あの時何となく家に居づらいのだと話していた少年の面影が重なる。
それは彼が姓をルーラケイスと名乗ることに何かしら関係があるのだろうか。
「ちなみにアイツすぐナンパするけど百戦百敗だから気にしなくていいわよ」
「ええ……」
世の中の女、見る目が無さすぎる。