第2章 魔導書
「こいつ女の子がいると途端に燃費悪くなんだよねー」
ああ、そういう意味。確かに昼間の光景はなんというか……任務に支障をきたしそうだった。
別に私個人が特別タイプって訳でもないのかあ。ちょっと期待して損したな。
しかしフィンラルがやれやれ気味にヤミ団長に進言してくれる。
「そんな理由で新しい芽を摘まないでくださいよ。あの子わざわざウチに来たいって言ってくれてるんですよ?」
こんな時も優しさが染みる。フィンラルにとって私が特別タイプじゃなくても、やっぱり私の方はこの人に惹かれてしまうらしい。
「それもそーだけどさあ。……ああでもまあちょうどいいか。これから問題児2人抱えるワケだしお守役してもらお」
「え?」
なんか不穏な言葉が聞こえたような。
「はいオマエ採用ね。今日からよろしく」
「は……はい!よろしくお願いします!」
何はともあれこうして私も黒の暴牛に入団できることになった。紆余屈折あったが、こうしてひとつ小さな夢を叶えることになったのである。
ー
「改めてよろしくねアスタくん」
「よろしくお願いしまァァァす!」
先に試験を終えていたアスタくんと会場の外で合流する。どうやらユノくんとは既にお別れを済ませたようだ。
「でもまさか君が本当に来てくれると思わなかった。仲間になれて嬉しいよ」
「私もですフィンラルさん」
心底嬉しそうに笑ってくれるフィンラルにこちらもにこりと微笑み返す。
色々ありはしたがこれからこの人に恩返し出来ると思うとこの上なく嬉しい。
「じゃあ早速だけどアジトに行くね。準備はいい?」
私たち二人が頷けば、フィンラルの手からあの空間魔法が放たれる。
「す、スゲー!」
アスタくんのその感動、わかる。私も初めて見た時そうだったよ。思えばこれに入るのももう3度目になるのか。
なんとなく感慨深くなりながら、先に通って行ったヤミ団長とアスタくんを追いかけて足を進めた。
「あ、そうだフィンラルさん。……これからはフィンラル先輩か」
「あはは、それはどっちでもいいよ。何か言いたいことがあった?」
「さっきはあんなことになりましたけど……、私の方はフィンラル先輩結構タイプですよ」
「え!?」
固まっているフィンラルを置いてさっさと魔法を通っていく。
言ってやったと少し気分良くなりながら、私は新しい人生の幕を開けた。
