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ネジを弛めたサドルに跨がる瞬間【弱虫ペダル】

第3章 暑さに溺れる【荒北 甘】


怪しい。こいつはまったくもって危険な状態だ。
頭が働かなくて視界がボヤける。だんだん吐き気なんかも感じてきて、完全に視界が真っ白になったと同時に、ふわっと体が浮いた感じがした。
一瞬意識は途切れたけれど気が付けばアスファルトに寝ていて、朦朧とした意識の中手から離れたストップウォッチを手探りで探したつもりでいた。けれど実際には微動だにしていない。どこにも力が入らない。ジリジリとした太陽とアスファルトが私を挟んで黒焦げにしようと容赦しない。

大会前の大事な時期にサポートするべきマネージャーの私がこんな様なのだ。いつものコースの折り返し地点で待機していたのだけれど、春とはいえ夏日が続く昨今で油断してはならない。選手も私もだ。選手なんてもっと過酷な暑さに囚われているはず。その為にも、給水がてらタイムをとる私がいるというのに。

今回は一年生も大会があるためひとりぼっち。あぁどうしよう。トップの金城先輩たちはとっくに過ぎていったし、次が来るのはいつかわからない。もしかしたら気づいてくれないかもしれない。最悪知らない誰かに気付かれたとしたら、知らぬ間に救急車で運ばれて部員にとって前代未聞の『マネージャー失踪事件』と騒がれるんじゃないだろうか。そんな不安を想像してたら少しだけ力が戻ってきた気がする。


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