第13章 欲情の夏【金城*裏】
アイスを買いに出る前にあらかじめ効かせておいたエアコンが部屋をきんきんに冷やしていた。思わず生き返るなんて言ってベッドに寝転ぶ。顔を埋めた枕から先輩の香りを強く感じた。
「寒くないか?」
「大丈夫です」
「隣、いいかな」
「…聞かないでください」
やや壁向きにつっぷした私の背後に寝そべってそっと頭を撫でられる。くすぐったくて肩を竦めると、そこから腕を辿って指を絡めた。
「せんぱっ…」
「ん?」
「あの、」
「あぁ、分かってるよ」
少し顔を向けると欲しかった唇が落とされた。軽く触れただけで離れると思わず追いかけようとしてしまう。そうやって何度かリップ音を鳴らしただけでとろけた口は先輩の舌を待ちわびてるというのになかなかそれを与えてはくれない。焦らされて焦らされて、我慢できずに舌を出すのに、それは軽く吸われただけで絡んではくれない。
「はぁっ…先輩っ」
「今日は時間がある。ゆっくりしよう」
「んっ、ふっ、やっ、もうっ」
「まだ始まってもないのにもうおねだりか?」
「はぁっ…いじわるっ…」
「言っただろう?時間はある」
耳元に響く低い声が私の身体を痺れさせた。何度舌を求めて突きだしてもやっぱりそれは吸われるだけで、わざと唇を外され追いかけても追いかけても逃げられて、不意に触れた唇を逃すまいと貪る仕草を見せるのに。唾液ばかりが分泌されて口内が無駄に潤ってきた。唇を開いて待ちわびて、触れそうな距離から遠ざかってしまって、思わず声が漏れた。そんな私を見下ろしてまた、先輩は笑う。
「そう物欲しげな顔をするな」
「先輩のせいです…」
「可愛くてつい、な」
「お願いっ意地悪しないで…」
「あぁ…にはかなわない」
さっき私の指を舐めた舌が同じように私の唇をなぞった。その先に待ち受けていた私の舌がたしかに先輩の舌を捕らえて、どちらともなく絡み合う。目の前が真っ白になってしまいそうなくらいとろけた身体そのものが先輩を求め始めて、汗で冷えた首に腕を回した。
「んっ…あ、はぁっ…」
頬を撫でられると視界から先輩が消えて、代わりに首筋に落とされた唇に鳥肌にも似た痺れを感じた。