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ネジを弛めたサドルに跨がる瞬間【弱虫ペダル】

第12章 それを恋だと言うのなら【新開←主←荒北】


取り繕ったような笑顔はきっと強がりで、多分この人はこうやって時間が解決してくれるのを待っているんだと思う。フラれたと言って軽く笑って、そうなるんじゃないかと思っていたんだ、って。

「相性いいと思ってたけど勘違いだったみたいだ」
「ふぅん」
「すげー好きだったんだけどな」

新開に彼女ができて、そうとは知らず告白して見事フラれた私にそれを言うのか。だいたい相性いいなんてどこの話よ。観たい映画を我慢して彼女に合わせて、結局後から私と寿一誘って観に行ったくせに。そのせいで私が彼女に疎まれて、友達介してあれこれ注意を受けたの知らずに堂々と話しかけてくるとか御免被る。何度睨まれたかわからない。何度それに怯んだかもわからない。

そもそもフッた相手に気まずさひとつ感じないのがおかしいの。そんな新開の態度に少なからず救われていたのは初めの内だけで、中途半端に気を持たせられてる事に気付いて心底嫌になった。それでも自分は彼女と違うまた特別な存在って期待させられたけど、よくよく考えてみれば気を使わないくらい軽い存在でしかなかったのだ。現に趣味の合わない彼女に合わせていたのだって好きだから新開がそうしたかったわけで、私に対してのそれはない。好きは好き。嫌いは嫌い。私にははっきり言ってくれる
。なのに、わかっていても、好きって気持ちが止まらない。悔しいよ。私も新開にそんな顔をさせたいよ。

「おめさんにこんな話すんのもなんだけどな」
「思い上がるな。いつまでも私があんたを好きでいると思うなよ」
「ははっ、好きな人できた?」
「さぁね」
「ほんと、なんでじゃないんだろな」

それはつまりそういう事だ。側にいる自分を好きでいてくれる存在よりも、やっぱり彼女が好きってことだ。ふざけないで。何が嬉しくて私は二度もフラれなきゃならないの。付け入る隙を伺ってたのは確か。けどだからってそんなつもりさらさらない。新開なんてもういらないの。たとえこの流れでいい感じになったって、新開の中に潜む彼女の影に脅かされるなんて絶対に嫌なんだから。
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