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ネジを弛めたサドルに跨がる瞬間【弱虫ペダル】

第9章 雫 【手嶋】



タオルで顔を隠して、それでも凄く恥ずかしくて、テンパったのは確かだけど、変な意味じゃなく興奮して。
泣きそうだった。告白なんて初めてで、ましてやキスなんて私の中ではいろいろ通り越していて、手嶋くんがそうした意図に凄く凄く期待して。なんかもう、本当に泣けてきた。

「チャリばっかやってそれしか頭になかったはずなのに、ふと彼女欲しいなって。それがならいいのにって、俺はずっと思ってたよ」
「う、ん…」
「ほら、顔見せてよ」

そっと手を下ろされて、自分の顔がどうなってるかもわからない不安でそらしたけれど、優しい笑顔が視界のすみに入る。
さっきは不意打ちでごめんな、て言いながら、今度は面と向かってちゃんと、私は手嶋くんを待ち構えて、さっきみたいに唇が触れる。
離れて目が合うと、どちらともなく顔を逸らした。なんかもう、恥ずかしくて死んでしまいそう。

「やっぱ照れるな、こういうの」
「うん…」
「ま、ゆっくりやってこ。インハイ終わったらとの青春謳歌するつもりだから」
「うん、そうだね」

気づけば雨雲が通りすぎていた。もう帰れるはずなのに帰りたくない私は手嶋くんと何度かキスをして、その都度照れた。もし今日雨が降ってなかったら、なんて考えたくもない。順番おかしいけど、なんて言って番号を交換して、二人の時間がゆっくり進んだ。

fin.

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