第3章 爆豪勝己
『切島くんには....渡してないよ...』
渡すわけないじゃん....。
もともとあなたに、本当はあなたにあげたかった。爆豪くんに食べて欲しかった。のに。
いらねぇ──
頭にこびりついて離れないその言葉が何度もこだまする。
「....クソ髪がいらねっつーならオレが貰う」
『....ぇ、な、んで....』
さっきから、切島くんとか渡す渡してないとか、噛み合わない会話にもう頭はパンク寸前だしもう意味が分からなくてだんだん視界が霞んでくる。
「いいから、オレに寄越せや」
私の右手を優しく取り、もっていた紙袋に視線をやる爆豪くん。乱暴な言い方なのにトーンはとっても優しく甘い声に心臓が大きく鼓動を打ち、右の頬に暖かいものが零れた。
「う....ッ...だって、爆豪くん、昼間ッ...女の子たちからの...っ...チョコいらないって...言ってたじゃん...」
いっぱいいっぱいになった感情と一度零れた涙は止まる事なく、次から次へと溢れ出した。
いきなり目の前で知らない女に泣かれたら驚くよね、もう呆れられたかもしれない。
この場にいるのもしんどくなって、掴まれてた爆豪くんの手を振り解いて彼の横を通り過ぎようとしたが、腕を掴まれて再び捕らわれてしまった。
「待てや」
『...ッ!!』
低くて強い声に肩が震えた。これ以上私を惨めにさせないでほしい、なによりこんな醜い姿の私を見ないでほしい。でも振り解きたいその手はピクリともしなくて。
「......ンなもん、好きな女のだけ食えれば充分だろーが」
え?
『ッ、それってどういう──』
「お、ばくごーのかっちゃん!と、噂のちゃんもいんじゃーん!近くで見るともっと可愛いのな!!」
「ちゃん、さっきは悪かったな!ちゃんと爆豪には渡せたのか?......ってなに泣いてんだよちゃん!」
突然現れた、黄色い髪のちょっとチャラそうな男の子と、昼間の切島くん。
「....あ?クソ髪テメェがコイツを拒否ったんだろうが。どーゆことか説明しろや」
「おいおい、なにかっちゃんキレてんだよって、可愛い彼女の前よ?」
『私、ッ爆豪くんの彼女じゃないし...』
何で自分でこんな事言わなきゃいけないんだろ。
何が何だか分かんないしもう帰りたい。