第3章 爆豪勝己
行き場のなくなった紙袋を持ち、下駄箱へ向かう。お昼休み握りしめて走ったせいか、紙袋はすでにぐちゃぐちゃ。
いらない──
紙袋見るだけで思い出しちゃう。渡す前に振られたようなもんだ。そうだよね。爆豪くんヒーロー科だもん。誰よりもヒーローに憧れる彼がそんな事にかまけてる隙ないよね。
自分に言い聞かせるようにして、何度も心の中でそう唱えた。
『あ......』
けれど神様は意地悪のようで、下駄箱に着くとA組の下駄箱のところに彼がいた。靴を履き替えこれから帰ろうとしているところだった。
爆豪くん......
突然視界に入った爆豪くんに驚いて声が出てしまった私に爆豪くんも振り返った。
「てめぇ.....」
『...ッ!』
こちらをジッと見る爆豪くん。入学式振りに彼から私に発せられた第一声目がてめぇ、だなんて。きっと爆豪くんは痴漢から助けてくれた事なんて覚えてないないだろうから仕方ないのだけれど。
私何かしちゃったかな、と背筋が勝手にピンとなる。
「......クソ髪に渡さなかったンかよ」
ボソッと低い声で呟く爆豪くん。
クソ髪?渡した?何を?いきなり爆豪くんから言われた言葉に頭が追いつかない。
『......なん...のこと?爆豪くん誰かと勘違いしてるん、』
「ッいただろーが。昼間オレらの教室の前に。クソ髪...切島っつー赤い髪の野郎と」
震える声で精一杯頑張って口にした私の台詞は爆豪くんの声で掻き消された。
ん、と乱暴に顎で指してるのは私が持っている紙袋。
あ......、昼間の切島くんとのやりとりの事を言ってるのかな。そこで赤い髪の男の子の名前が切島くんという事を初めて知った。
ていうか私が切島くんといたとか、そんなの爆豪くんに関係ないじゃん......。