第10章 月夜の華炎②【セイヤ】
『ホムラ…』
告白を受けたばかりだった事を思い出したアリスはセイヤの腕の中 焦った様子でホムラを見つめる。だがホムラはそんな彼女に対し 優しく微笑み そっとその髪に触れるのだった。
「おっと、気を抜かないでよね
きっといつか──…僕が君を攫ってみせるから」
『え…?』
「──それは俺にとっては
聞き捨てならない台詞だな」
「ま、せいぜい頑張って防戦しなよ、
……"伝説の" ハンターさん?
覚悟して。
僕は相当に諦めが悪いんだ」
言葉に詰まったセイヤと
何処か吹っ切れた様子のホムラが暫し無言で睨み合う。
『ちょっ、やめてよ!2人とも!!
───こんな状況なのに…っ!』
だがアリスの心臓はドキドキと否応なく高鳴ってしまう。ホムラからの熱烈な告白──それからその事に嫉妬してくれているセイヤの怒りが 彼女をすっかり動揺させてしまっていた。
「ああ───すまない。
あんたも──…
今日は血を流し過ぎたな
残念だが 酒を呑むのは
また別の機会にしよう」
『──…うん…
………
………
────て…ッ、え──!?』
その時唐突にアリスの身体が重力に逆らいふわりと持ち上がってゆく。
見れば彼女の目の前に 彼女の主治医であるレイがいて、気付けば彼に抱き抱えられていたことにアリスは驚きで目を瞬いていた。
『レイ先生…!?な なんでここに…っ』
「悪いが早急に患者の治療に当たらせてもらう」
レイはアリスと目が合うとやはり安堵した様に溜め息を吐き、それから小さく肩を竦めたのだった。
「無事だったかアリス」
事の次第を聞けばどうやらレイは氷のevolで、発生した火災を早急に収める事に尽力し、更に偶然居合わせたセイヤと共闘して現場での怪我人の応急処置にも一役買ってくれたらしい。
実の所 度々怪我をし入院するアリスの見舞いに来る事で、セイヤと彼女の主治医であるレイは 既に何度か顔を合わせた仲だったのだ。
────…
その後各地に点在していたハンターと、レイを主導とした医師達が連携し 怪我人の治療やこの不測の事態への対応が進められていく。
to Be Continued