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深空の幻【恋と深空】

第7章 煩悶の渦中へ②【レイ】





昨夜の激しかった雨は明け方にはにわか雨へと変わっていた。


あれだけ熱いと感じていたアリスの身体は、早朝の濡れた大気によって既に冷えかかっている。


対比する様な昨夜のレイの熱い体温を思い出した彼女は自身の身体を顔を歪め強く抱き締めたのだった。そして何かの思いを断ち切る様に、そのままにわか雨の中Akso病院のエントランスから駆け出してゆく。


────…


────────…



自宅に帰り雨に濡れた身体をシャワーで暖めたアリスは、ぼんやりとカーテンの隙間から覗く外を眺めていた。にわか雨も漸く上がり、薄らと雲の隙間から零れる朝日に無意識に目を細める。


昨日の出来事が何度も繰り返し
彼女の脳内で再生されていた。それはまるでスローモーションの様に印象的な場面だけが特に色鮮やかに蘇ってくる。


レイの汗ばんだ顔、逞しい胸板


刹那そうに耳に触れる熱い吐息


肌を滑る骨ばった、でも繊細な指先


……そして密着した時感じた、
彼の匂いすらも────…


その全てが夢の中の出来事であったかの様に
アリスにとって朧で幻想的だった。







その時ピコンという音と共にテーブルに伝わる振動で、彼女はハッと我に帰る。振り返ったアリスは自身のスマホを手に取った。


画面を見れば案の定、
それは先程まで一緒にいた───そして今も脳裏から離れない、レイからのメッセージだった。





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