第3章 運命の恋人【セイヤ】
「しかし…」
『いいからセイヤ、こっちへ来て』
アリスがセイヤを手招くと、彼はため息を付き 彼女のそばにある椅子へと浅く腰掛けた。
どちらからとなくいつしか互いの手に触れ合った2人は、無意識に見つめ合っている。
その目には明らかに友情以上のものが色付いていた。
「アリー───…
あんたが無事でいてくれて良かった」
『うん。
私も、あなたがあの場に来てくれて嬉しかった
ありがとう、セイヤ』
触れた指がそっと絡み合う。
2人はやっと解けた緊張感の中、そうして微笑み合ったのだった。
訪れた沈黙をきっかけに
セイヤがふと顔を傾げ 彼女へと唇を寄せる。
アリスは少し驚いたが
意を決しそれを受け入れようと
軽く瞳を閉じた、その時だった。
「──────ごほんっ」
明らかにわざとらしいレイの咳払いが聞こえ、2人は慌てて距離をとる。
差し込む夕陽が薄っすらと、2人の顔を紅く染め上げていた。
過去を巡る様に
────2人はまた恋に落ちようとしている。
fin.