第2章 我儘な独占欲【ホムラ】
アリスは嫉妬深い恋人の頬を両手で挟み、背伸びをしてキスをする。ホムラは不満気だった顔をだが直ぐ薔薇色に染めた。
「こんな事では絆されないよ、僕は…
『しぃ…
もう黙って…』
聞き分けの悪い口はこうして塞いでしまうに限る。これもまた自身の経験則からアリスは理解していた。柔らかい唇を割ってキスを深めれば、戸惑ったホムラもアリスの腰を抱き応えてくれる。アリスはホムラの首に両腕を絡ませ引き寄せた。
「ん…アリー…」
『…は…っ、ホム、ラ…ん…』
言葉などいらない。互いの心はこれだけで簡単に寄り添っていくのだから。長い口付けを交わした2人は互いの息を絡め、鼻先を合わせて見つめ合っていた。
「はぁ…全く
お嬢さん、君はあざとい策士だね……」
『……あなたにだけは言われたくないかも?』
「今度は僕ともゲーセンに行ってくれる?」
『ふふ…お安い御用だよ』
────…
翌月トウの説得によってなのか、ホムラはイベントに参加していた。名だたる俳優にも見劣りしない彼の端麗な容姿に、ギャラリーが一斉に黄色い歓声をあげる。タキシードで颯爽とレッドカーペットの上を歩くホムラは、悪戯に彼の恋人へと微笑を送った。俄かに彼女の頬が引き攣ったのは見間違いではなかったろう。
もしかしたらホムラはギャラリーに囲まれ黄色い歓声を浴びる事で、アリスに一矢報いようとしていたのかもしれない。
fin.