第12章 絡め取る【シン、ホムラ】R18
『ちょ……シン────何っ』
トサ────…
暫く大股で移動して 入った部屋でシンはアリスを柔らかくベッドの上へ横たえる。
そこはシンの私室だった。荷物の様に運ばれた割には扱いが優しい。が、アリスの上から降ってきたのはその内容とははかけ離れた 高圧的な声だった。
「どうやら熱があるようだ
今日は大人しくベッドにいろ」
行動と声音に乖離があるようだが、何か裏でもあるのかと勘繰ってしまう。
「共鳴」の為 好感度を上げに来ているのだとしたらこのやり方はとても紳士的とは言えない
『────…熱…?』
アリスは自分の体調不良に気づかなかった。
シンが先程首に触れてきたのは彼女の体温を確認する為だったのか。だとしたら見た夢を意識し過剰に反応していた自分が急に恥ずかしくなってくる。逞しいシンの身体に組み敷かれているこの状況が更にその感情を後押ししていた。
トレーニング後の彼は軽装で 微かに汗ばんでいる。
見下ろす視線に自然と鼓動が早くなっていた。
だが言われてみれば───…この目眩や倦怠感は確かに単に夢見が悪いだけのせいでもなさそうだ。自覚すると途端に目の前がぐるぐると回り始める。
体調の悪さなど気付かない方がいい。
自覚がなければ気のせいだと気合いで押し切れるのだから──…アリスはぼやけた意識で無け無しの虚勢を口にした。
『────なら私の部屋へ運んでよ…
こんな大きなベッドじゃ、落ち着いて休めない』
だがシンはそんなアリスの小さな反抗心すら楽しんでいる様子だ。
「ハンターのお嬢さんは俺が目を離した途端、安静とは程遠い事をしでかしそうだ
だから安心しろ────…
そうならないよう 俺がちゃんと側で見張っておいてやる」
その言葉にアリスは更に酷い頭痛までをも自覚し始めた。こめかみを抑えながら頭上のシンを睨みつける。
『───あなたって難儀な人ね
私が心配なら 素直にそう言えば良いのに』
アリスの言葉に シンは一瞬目を丸くするが直ぐ楽しそうに意地悪な笑みを深めた。
「ベッドに拘束されたくなければ
今すぐ薬を飲んで このまま大人しくしていろ」