第12章 絡め取る【シン、ホムラ】R18
「こんな勝手、僕は許さないよ」
───…
納得できない心中を持て余し、ホムラはその足で彼女のマンションに向かった。
通い慣れた道を歩きながら 途中、彼女とよく待ち合わせていたカフェをふと視界に入れる。あそこで仕事帰りの彼女を待ち 2人でお茶をしてそのまま 彼女の住むマンションに泊まる、それがお決まりのルーティーンだった。
彼女はいつもカフェでお気に入りのホットチョコレートを時間を掛けゆっくりと飲み、だから部屋でするその日最初のキスはいつも チョコレートの味だった。
ああ、何故こんな事になったのだろう──…
あの場所でつい先日まで僕たちは、なんの憂いもなく 幸せに笑い合っていたはずのに──…
(幸せだって思っていたのは、
───…まさか僕だけだったのかい?)
キラキラとした過去が、走馬灯の様にホムラの脳裏に蘇りそして消えてゆく。
⭐️
予想通りその時間 彼女は留守で 部屋キーの暗証番号は変えられていた。
部屋に入れなかったホムラは諦めて踵を返したのだが、やはりやり切れずにマンションの前でアリスの帰りを待つ事にした。
だが暫く後 現れたのは待ち侘びていた彼女ではなく、同じマンションに住む 彼女の同僚だった────名前は確か、"セイヤ" といったか。甘いマスクで 彼女とも仲のいいこの男に、ホムラは幾度か嫉妬したことがある。だが、今となってはもうそれすらをも懐かしく感じた。
しかしそこで彼に聞いた新たな真実がホムラに1つの疑念を抱かせることになる。