第14章 秘密【アズカバンの囚人】
「そういえば……」
私はふと、あることを思い出した。
「私ね、夢で何度も貴方の事を見たの」
「夢で?」
「私の小さな頃の記憶なのかもしれない。貴方がいて、リーマスがいて、母さんと父さんもいた夢。でもね、貴方が1番多く出てくるの」
夢の中で私に優しく触れて、優しく微笑む人。
私はその人の事を夢見る度に、惹かれていたことを思い出す。
どんな人なのか、どんな風に笑うのかなんて気になっていた。
今、その人は私の目の前にいる。
「そうなのか。私が夢の中に……」
「そう。幸せで優しい夢ばかりなのそれが……」
「そうだったのか。それなら良かった。嫌な記憶の夢じゃなかったなら、それでいい。幸せな夢を見てくれ」
シリウスはそう言うと、私の額にまたキスを落とした。
「ひゃっ!?」
「そんなに可愛い声を出さないでくれ。リーマスに聞かれたら私が殺されてしまうからね、本当に」
ウインクをしたシリウスは何処か機嫌が良かった。
「眠れそうかな?」
「う、うん……」
「それなら良かった。また寝物語が必要な時は言ってくれ。何時でも君のために語ろう」
「ありがとう……」
シリウスはまたウインクをすると、立ち上がってから扉の方へと向かう。
そして扉を開ける時にこちらを振り返る。
「おやすみ、アリアネ。いい夢を」
「おやすみなさい……」
笑顔を浮かべたシリウスは部屋を出て行った。
その後ろ姿を見送ってから、私はベッドの中で寝返りを打ちながら額に触れる。
シリウスの笑顔を見る度に、胸が熱くなる。
優しくしてもらう度に、額にキスされる度に嬉しくて恥ずかしくてたまらない。
「なんで……?」
自分に問いかけてみるが、分からない。
だけのこの感覚は知っている気がしたけれど、分からなくて目を閉ざす。
「次は、いい夢が見れそう……」
シリウスのおかげなのだろう。
そう思いながらゆっくりと目を閉ざして、夢の世界へと誘われた。
『アリアネは小さくて可愛いな』
『また抱っこしているのかい、シリウス。いい加減、俺に返してくれ。俺の娘だぞ』
『減るもんじゃないからいいじゃないか。たまにしか会えないんだからな。なあ?アリアネ』
幸せな夢だった。
シリウスに抱かれている夢。
こんな夢をずっと見たかったのだ……。
私は、シリウスを夢の中で見ていた時から惹かれていたようだ。