第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
「ジェームズ・ポッターとウィリアス・フリートは、ブラックだったら4人の居場所を教えるぐらいなら死を選ぶだろう、それにブラックも身を隠すつもりだとダンブルドアにお伝えしたのです。……それでもダンブルドアはまだ心配していらっしゃった。自分がポッター夫妻とフリート夫妻の『秘密の守人』になろうと申し出られたことを覚えていますよ」
マクゴナガル先生の瞳が徐々に鋭くなっていくのが見えた。
「ダンブルドアはブラックを疑っていらした?」
「ダンブルドアには、誰かポッター夫妻とフリート夫妻に近い者が、4人の動きを『例のあの人』に通報しているという確信がおありでした。ダンブルドアはその少し前から、味方の誰かが裏切って、『例のあの人』に相当の情報を流していると疑っていらっしゃいました」
「それでもジェームズ・ポッターとウィリアス・フリートはブラックを使うと主張したんですの?」
「そうだ」
魔法大臣の重苦しい声が聞こえた。
私は咄嗟に耳を塞いだけれど、それは無駄な行動。
隙間から彼らの話し声が聞こえてくるのだから。
「そして、『忠誠の術』を、かけて1週間も経たないうちに──」
「ブラックが4人を裏切った?」
「まさにそうだ。ブラックは二重スパイの役目に疲れて、『例のあの人』への支持をおおっぴらに宣言しようとしていた。ポッター夫妻とフリート夫妻の死に合わせて宣言する計画だったらしい。ところが、知っての通り、『例のあの人』は幼いハリーのため凋落した。力も失せ、酷く弱体化し、逃げ去った。残されたブラックにしてみれば、全くいやな立場に立たされてしまったわけだ。自分が裏切り者だと旗幟鮮明にしたとたん、自分の旗頭が倒れてしまったんだ。逃げるほかなかった──」
「くそったれのあほんだらの裏切り者め!」
ハグリッドの罵声でバーがしーんと静かになる。
するとマクゴナガル先生が慌てて『シーッ!』と言って、ハグリッドの声量を落とさせる。
「俺はヤツと出会ったんだ。ヤツは最後に出会ったのは俺にちげぇねぇ。そのあとでヤツはあんなにみんなを殺した!ジェームズとリリーとウィリアスにヘレンが殺されっちまった時、あの家からハリーとアリアネを助け出したのは俺だ!崩れた家からすぐにハリーとアリアネを連れ出した。可哀想なちっちゃなハリーとアリアネ」
ハグリッドは怒りと悲しみが滲んだ声を出していた。