第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
そしてハリーもまた、ゴブレットへと視線を向けていればスネイプは後ずさりするように部屋を出ていった。
リーマスは2人からの視線に気がついたのか、小さく微笑みながらゴブレットを手にする。
「スネイプ先生が私のためにわざわが薬を調合してくださった。私はどうも昔から薬を煎じるのが苦手でね。これはとくに複雑な薬なんだ。砂糖を入れるとききめが無くなるのは残念だ」
リーマスはそう言いながら薬を1口飲み、身震いをしていた。
「どうして?」
「このごろどうも調子がおかしくてね。この薬しか効かないんだ。スネイプ先生と同じ職場で仕事ができるのは本当にラッキーだ。これを調合できる魔法使いは少ない」
アリアネは直ぐになんの薬か分かった。
だが、口には出さずに薬を飲みほしていくリーマスを見つめるだけ。
「スネイプ先生は闇の魔術にとっても関心があるんです」
「そう?」
「人によっては、スネイプ先生は『闇の魔術に対する防衛術』の講座を手に入れるためなら何でもするだろうって、そう言う人もいます」
「それは……どこからの話なの?」
「色んな人からの話」
2人の会話を聞きながら、リーマスはゴブレットの中身を飲み干してから顔を顰めた。
「ひどい味だ。さあ、ハリー、アリアネ。私は仕事を続けることにしよう。あとで宴会で会おう」
「はい」
「またあとでね、リーマス」
空になったティーカップを置いてから、2人は教室をあとにした。
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「ほーら。持てるだけ持ってきたんだ」
鮮やかなお菓子が、ハリーとアリアネの膝に雨のように降り注いだ。
黄昏時に帰ってきたロンとハーマイオニーからの、2人へとのお土産だった。
「ありがとう」
「ありがとう、2人とも」
ハリーは『黒胡椒キャンディ』を、アリアネは『糖蜜ケーキ』を手にした。
「ホグズミードって、どんなところだった?どこに行ったの?」
「気になるわ。どんなところだったの?」
ロンとハーマイオニーは2人にホグズミードの話をした。
魔法用具店の『ダービジュ・アンド・バングズ』や悪戯専門店の『ゾンコ』や『三本の箒』で泡立った暖かいバタービールを飲んだ話などを色々。
「そう、楽しかったなら良かったわね」