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水色の恋模様 【鬼滅の刃 冨岡義勇】

第2章 小豆娘



診察室の扉をコンコンと鳴らし、中から『どうぞ』と声が聞こえたのを確認してから中へと入る。


「失礼する」

「あら冨岡さん、こんにちは。前回の柱合会議以来ですね」

「そうだな」

「今日はどうされたんですか?見た所どこも怪我はして無さそうですが。具合でも悪いんですか?」

「怪我はしていない。どこも悪くない」

「それは良かったです。あのぉ…冨岡さん、私暇じゃないんですよ?」

「俺も暇じゃない」

「では、何しにここへ?」


笑顔の中に見え隠れする青筋。
用がないなら帰れと顔が訴えている。

しかし俺だって暇ではないし、ただ単に遊びに来たわけではない。
今日俺は、用事があってここへ来ているのだ。


「薬を、分けてはもらえないか?」

「薬ですか。どんな薬でしょう?」

「傷に塗る薬だ。出来れば傷が残らないようなものが欲しい」

「ありますけど、珍しいですね。今まで治ればなんでもいいって仰っていたじゃないですか。気になる傷でもあるんですか?」

「使うのは俺ではない」

「と言いますと?」

「知り合いの女子だ」

「……」


俺は、何かおかしな事を言ってしまったのだろうか。
胡蝶が黙り込んでしまった。
どうしたら良いのだろうか。
とりあえず……待つか。

暫し沈黙の後…


「まぁ!なんという事でしょう!」


胡蝶は突然驚きの声を上げた。


「どうした」

「冨岡さん、その女性の方に怪我を負わせたのですね。その方、お気の毒に…」


心外!


「俺じゃない。自分で転んで擦りむいただけだ」

「あら、そうだったんですね。私ったら失礼しました」


…もしやわざとか?
揶揄われて遊ばれている気がしなくもないのだが…


「そういう事でしたらいいものがありますよ。お渡しするのでその方に差し上げてください」

「感謝する」

「…大切な方なのですか?」

「…?」

「傷の心配をなさってるくらいですから、特別な方なのかと思いまして」


そういうものなのだろうか。
俺はただ、傷痕になったら可哀想だと思っただけなのだが。
胡蝶の言っている事は分かるが俺には当て嵌まらない気がしたので、現状を正直に伝えるだけにした。


「昨日会ったばかりだ。よく分からない」

「そうですか」


胡蝶は目をパチクリさせていたが、また直ぐに元の澄ました笑顔に戻っていた。


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