第2章 小豆娘
それから小豆娘と二人、ひたすら小豆を拾った。
二人で拾えばあっという間だった。
あらかた綺麗になっただろう。
そろそろ俺は行くかとその場を離れようとしたその時、ふと足元を見ると、小豆娘の鼻緒が切れているのが目に入っる。
「草履を脱げ」
「え?」
「直してやる」
このまま何もせず去るのは少し心苦しかったので、切れた鼻緒だけ直してやる事にした。
手拭い以外いいものを持っていなかったので、それの端を裂き、切れた部分をきゅっと結ぶ。
「応急処置だが、どうだ?」
「歩けます。ありがとうございます」
不器用な俺が直したのだ。
綺麗に直してやれなかった。
それでもこの娘は俺にありがとうと礼を言い、とても嬉しそうな顔で微笑んだ。
小豆を拾ったり、不恰好でも文句は言わなかったり。
頑張り屋で優しい子なのだろうな。
ここでさよならしようと思っていたが…
もう少し、一緒にいてもいいだろうか
…帰れと言われたら帰ろう。
という考えに落ち着き、小豆娘はこれを運ぶ途中だったのだろうと、小豆の乗った一輪車を押す構えに入った。
「俺が押していく。お前は道案内だ」
「あ、ありがとうございます!こっちです」
問答無用で指示を出す俺に素直に従う小豆娘。
やはり優しい子なのだと思った。
「あの…」
「なんだ」
「お名前聞いてもいいですか?」
「……冨岡義勇だ」
名を聞かれたついでに、俺も聞こうと思っていた小豆娘の名を聞いてみた。
「お前は…」
「花里柚葉です」
「花里か」
小豆娘は花里柚葉というのか。
柚葉…可愛い名だ。
……また俺は、何を考えている…。
それから、減ってしまった小豆をもらいに小豆の店へ。
そこでまたもや号泣する花里。
よく泣く娘だ。
店の店主と夫人に慰められながら無事小豆を調達。
花里が働いているという店にそれを届け、さぁ終わりだと思いきや。
よく見れば腕を怪我しているではないか。
鼻緒を直す時に気付いてやればよかった。
やはりこのままでは帰れないので手当てをしてやる。
消毒をしながらふと、さっきの歩き方を思い出す。
右脚を若干引き摺っていた。
…痛いのかもしれない。