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水色の恋模様 【鬼滅の刃 冨岡義勇】

第2章 小豆娘








蝉の声が木霊する小道を、とぼとぼと歩く。

まだまだ日差しは強い時期だが、道の両側から伸びる大きな木々の枝が頭上で交差し、強い陽の光を上手く隠していた。
柔らかな木漏れ日が小道に降り注ぐ。
暑くもなく、寧ろ涼しささえ感じられた。

この小道は、蝶屋敷へと続いている。

歩きながら、昨日の一日を思い出していた。




















「義勇…任務ジャ…。行クゾ…」


早朝、俺の鎹鴉の寛三郎に頭を突っつかれて起こされる。
昨夜鬼を狩り、見回りをしながら家に戻って来たのが夜中の三時頃。
そこから二時間ほどの睡眠の後…、である。


「…おはよう寛三郎。もう朝だ。今から鬼は出ない」


薄暗いせいで夕暮れと勘違いしたのだろうか。
最近はこうして起こされる事もしばしば…。


「ソウカ、朝ジャッタカ…。スマンノウ…」

「いや、起こしてくれてありがとう。昨日は寛三郎も疲れただろう。俺はもう少し寝る。寛三郎も一緒に寝よう」

「ソウジャノウ…アリガトウ。義勇ハ優シイ子ジャ…」


そう言って寛三郎は俺の枕元で丸くなる。
俺も一緒に横になって背中を撫でてやると、寛三郎は目を閉じて直ぐにすー…っと眠ってしまった。

寛三郎はもうかなり高齢の鴉だ。
聞き間違い、伝え間違いもよくあるので、時々大丈夫だろうかと心配になる事もある。

見兼ねて「他の鴉にしたらどうか」と提案された事もあったが、俺は寛三郎以外の鴉に変えるつもりは全く無い。

寛三郎とは十三歳の頃からずっと一緒だ。
最終選別で絶望に打ちひしがれ、いつまでも泣き続けていたあの頃からずっと…。

出来れば俺は最後まで、寛三郎と共に戦い抜きたいと思っている。


「…どうか、長生きしてくれ。寛三郎…」


お前まで、俺より先に逝かないでくれ…


願いを込めた呟きは、夢の中の寛三郎には届いていないだろう。

寛三郎にも一緒に布団を掛けてやってから、俺ももう一度眠りについた。






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