第1章 優しい人
「奢るだのなんだのは気にしなくていい。花里さえ良ければだが…、一緒に食べてくれないか?」
今日初めてあったばかりなのに、食事のお誘いなんて…
他の人ならきっとお断りしていた
でもなぜだろう…
今の私は
この人のことをもう少し知ってみたいと思ってる
「いいですよ。お安いご用です」
「そうか。…ありがとう」
そう言って、綺麗に微笑んだ冨岡さん。
少し嬉しそうで、私も釣られて微笑んだ。
「いつにするんだ?」
「明日!明日にしましょう!」
「承知した」
「約束ですよ」
そう言って立てた私の左手の小指に、冨岡さんの左手の小指が絡まった。
針千本
指切った
怖い言葉が並んだ指切りげんまん
でも冨岡さんとのゆびきりげんまんは、触れた小指が温かくて、優しいゆびきりだった。
「また明日」と玄関を閉めて、ガチャンと鍵を掛ける音を聞いてから、冨岡さんは帰って行った。
やっぱりどこまでも、優しい人だ。
その日の夜、久しぶりに家族の夢を見た。
皆で笑い合っている、幸せな夢
きっと、私にとって
素敵な出会いがあったからかもしれない
明日が待ち遠しいなと思えるほどに
早く明日になぁれ
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