第1章 英/甘 マカロンの心得
「あっあのですね……」
「なんだよ」
つっけんどんな態度をしてしまう自分を、アーサーは殴りたくなる。
すると、がばっとなにかをさしだした。
びくっと驚いてその手を見ると、そこには丁寧に包装された小さな包みがあった。
なにかと思うと、がまくし立てる。
「最近会長の仕事で忙しいでしょ? あまり会えなかったし、会えてもあんまり機嫌よくなさそうだったし」
「いや――」
それはがフランシスとばかりいるせいで――
「でね、なんか元気づけられないかなって思って。このあいだフランのマカロン美味そうに食べてたの思い出して、じゃ作ろう! って思ったんだけど、フランに手伝ってもらわないとなかなか難しくて……結局渡すの遅くなっちゃって……それで――」
「え……?」
間の抜けた呟きがもれた。
もごもごと口ごもるにハッとなる。
アーサーは、すべてを理解した。
――まさか、全部俺のため?
「う、受け取ってもらえる……かな?」
恥ずかしげに問うを直視できなかった。
目を若干伏せたまま、差し出された小箱を受けとる。
「あ……ありがとう……」
すると自分でも驚くほどに、素直な言葉が口をついた。
多分自分は、ずっと欲しかったものをクリスマスにプレゼントされた子ども、みたいな顔をしているはずだ。
「……やけに素直だね」
「いや、その……っ!」
「顔真っ赤だよ。ふふっ、そんなに喜んでもらえて嬉しい」
「なっ!? ち、違ぇよばか!!」
すべての誤解が氷解し、安堵感とあたたかい感情が広がっていった。
嬉しさやその他のいろんなもので、顔がカッカと熱を持っている。
それはしばらく止みそうにない。
今回ばかりはフランシスを大目に見るべきか――いやでもやっぱだめだな。
「久しぶりに一緒に帰れるね」
「そ、そうだな」
お返しになにを作ろうか、考えると胸がはずむ。
の笑顔を見ながら、いかにさりげなく手をつなぐか、アーサーは第二の問題にぶち当たるのだった。
end