第5章 日中米/逆ハー? 血ヲ奉納セヨ
アルは、目をぱちくりさせて困惑しきっていた。
が、すぐに持ち前の好奇心で、キョロキョロし始める。
なにを思ったのか、その目がだんだん輝きだした。
「なんだいここ!? まさに東洋の神秘ってかんじだね! ニンジャとかサムライとかでそうじゃないか!!」
「観光か!!!!」
ってツッコんでる場合か!?!?
頭を抱えたくなりながら、おそるおそる妖の方を見る。
すると、なぜか、二人は後ずさりをしていた。
その顔はまるで、異臭を放つ生ゴミを見るような顔だ。
――まさか、
「な、なにあるか、そいつ……」
「今までにない不快感を感じます……ちょっ、その方をこちらに近づけないでください」
全身全霊で不快感を表す二人に、アルが一層目をキラッキラと輝かせた。
「なんだい君たち! なにかの撮影かい? とてもcoolじゃないか! 写真とらせてくれよ!」
そんなことを言いながら、スマホを取り出す。
世界観を笑顔と土足スキップで蹂躙していくアルは、握手かサインでも求めるように二人に近づいていく。
二人は恐怖と不快感に慄きながら、距離を離そうとさらに後退した。
どうやら、妖にとってアルは、苦手中の苦手らしい。
そういえばアルは霊感0なばかりか、恐れるどころか子どものように面白がっているし、なにより彼の血族の影響が大きいのだろう。
――なるほど、たしかにこれ以上ないほどの“助け”かもしれない。